腰痛は多くの人々にとって厄介な問題であり、日本腰痛学会によると日本では一生のうち85%の人が腰痛を経験すると言われています。
病院・整骨
院・整体院などで様々な治療法が行われていますが、その中で鍼治療は腰痛に効く・効かないという声を聞いたことあると思います。
昔から使われている施術方法の一つなので、腰痛の治療において効果があるだろうと思うけど実際にどうなの?まだ試したこともないから、まず情報を知りたいなど考えていると思います。そこで鍼治療の効果は科学的に証明されているのか調べてみました。
鍼治療の仕組み
鍼治療は腰痛へのアプローチの中で定番の一つになっています。その作用はいくつかの仕組みが挙げられています。
筋肉のリラックス
鍼治療は固まった筋肉を柔らかくし、痛みやしびれの原因となる物質を除去する効果があります。
腰痛の主な原因は筋肉の固まってしまうことによるコリであり、鍼治療はこれらの固まった筋肉に対して効果的です。
血流の改善
鍼を刺された部分は体が反応して血液が集まるように促されて、血流循環が向上します。
これにより血流が促進され、血液中の新鮮な酸素やビタミンなどの栄養素が運ばれ、回復促進につながります。
体のバランスの調整
鍼(鍼灸)治療自体、バランスを整える医術と言われています。
急激に体を変化を与えず、腰痛の要因にアプローチすることで体が本来持っている自己治癒能力を促します。
元々あった健康の体へ戻していく方法なので、その人に合わせた快適な体になっていきます。
ストレスの軽減
先ほど書いた筋肉のリラックス効果もありますが、鍼(鍼灸)治療はストレス軽減に対しての声も散見されます。 実際に施術方法や特性からみて、リラクゼーション効果の可能性があると1993年発表の日本の論文(※1)があります。
また、2008年発表の日本の論文(※2)では、過敏性腸症候群に対する鍼灸治療・高齢者の抑うつに対する鍼灸治療で検証が行われており、本来の治療法に鍼灸治療を併用することで有効手段の一つと書かれています。
※1 ストレスから解放そして鍼灸-中枢神経機能からみた鍼灸のストレス緩和の効果について-
※2 心身医学 的な病態に対する鍼灸治療の効果と脳報酬系に及ぼす影響
鍼治療は腰痛への効果・科学的根拠について
2022年にアメリカで発表された慢性腰痛に対する鍼治療のメタ分析がされました。
メタ分析とは、今まで発表された論文の中で実際に正しいのかを再度検証して効果・結果を出す分析のため、論文の中でも信用性は高い部類のものです。
検証内容は、2000年から2020年までの5000件以上の論文から選別した4件の論文を基に慢性腰痛(検証では3ヶ月以上の腰痛持ちと定義)患者を参加させて、運動、手技療法を通じてリハビリする理学療法や運動・通常のケアを行う標準治療グループと、標準治療にプラスして補助療法として鍼治療を行ったグループで検証されました。
結果は、鍼治療を取り入れたことにより痛みや障害の軽減数が増え、痛みのレベルも施術を受けて期間をおいても痛みの度合いが弱くなったと報告されています。
他の論文として、2021年に中国で発表された急性腰痛に対するメタ分析がされました。
こちらは、5000件以上の論文から選別した13件を基に急性腰痛に対して鍼と偽鍼(プラシーボでの検証)と痛み止め薬での比較検証です。
結果としては、偽鍼には多少の有用性。痛み止め薬には偽鍼よりも高い有用性が実証されました。
比較対象に手技など治療院で受ける施術が含まれてないため鍼治療の有用性が分かりづらいですが、痛み止め薬を飲み続けるよりは施術の有用性が示しています。
万人すべてが必ず結果が出るというものではありませんが、統計的なデータで見ると鍼治療を併用することで痛み・障害の軽減やその後の持続性も期待できると思います。
参照論文
Effectiveness of Acupuncture for Nonspecific Chronic Low Back Pain: A Systematic Review and Meta-Analysis
Acupuncture for acute low back pain: a systematic review and meta-analysis
まとめ
腰痛に対して鍼治療は、一般的な手段の一つとして声が上がりますが、実際に論文でも実証されているほど有効な選択肢の一つと言えます。
まずは医療提供者と自分の体が鍼治療が合っているのかを相談し、可能な場合は鍼治療を一つの選択肢として考えてみてはどうでしょうか。